吉村昭『蚤と爆弾』のあらすじと感想!実在したとされる謎の細菌兵器。

またまたものすごい本に出会いました。

『どこからこんなテーマを見つけてきたんだろう?』という感じです。

 本当かよ? 

そう言いたくなるような狂気の内容を描いたのが、吉村昭著『蚤と爆弾』です。

本作のテーマは731部隊。

731部隊とは、細菌兵器の研究・開発を行っていた大日本帝国陸軍の研究機関『関東軍防疫給水部』の通称です。

しかし、戦時中とはいえ、こうした軍事活動は当時の国際条約違反であり、その存在は極秘扱いとされていました。

この731部隊が広く世間に知られるようになったのは、森村誠一著『悪魔の飽食』によるものですが、本作はそれよりも10年以上も前に発表されています。

本作は緻密な調査に基づいた『小説』という形をとっているので、内容がどこまでが事実なのかは分かりませんが、もしこの細菌兵器が実際に使用されていたらと思うと、とてつもなく恐ろしい話です。

ちなみに、本作以外で私が読んだ吉村昭作品は、日本の脱獄王を扱ったプリズンブレイクのような内容の『破 獄』、日本最悪の獣害事件である三毛別羆事件を扱った『羆 嵐』、水も食料もない絶海の無人島に漂着した男をテーマにした『漂 流』などです。

どの作品も非常に重厚ですが、実際の事件をテーマにしているというから驚きです。

まさに事実は小説より奇なりですね。

テレビドラマやラノベに飽きてしまったら、こうした超濃厚な作品でガツンとやられるのもいいかもしれません。

さて、ここで問題です。

非常に印象的な『蚤と爆弾』というタイトルですが、その由来はどこから来ているのか?

狂気的な天才医学者に関する本作を読み進めていけば意味が分かります。

吉村昭『蚤と爆弾』のあらすじ。これを映像化するのは無理かも。

本作に登場する731部隊の隊長は、京都帝国大学医学部を卒業した優秀な医学者。

彼は、汚水を飲料水に浄化する濾過装置を開発したり、凍傷の治療に効果的な水の温度を発見したりするなど、その研究実績が軍部で高く評価されます。

そして、関東軍防疫給水部の長として細菌兵器の研究に取り組むことに。

実験が行われていたのは、ハルピン南部に建設された巨大な研究施設です。この施設は非常に規模が大きく、宿舎、食堂、講堂、プールなどもあったそうです。

ここに日本国内のエリート医学者たちが集められました。

ところで、研究というと試薬や三角フラスコなどに囲まれた実験室の中で研究者が試験管を振っているイメージがあります。

しかし、ここでは『丸太』も使われていました。

丸太・・?

『丸太』といっても木材の丸太ではありません。

ここでいう『丸太』とは、捕虜として捕らえられた中国人やロシア人の諜報部員のこと。

彼らを隠語で『丸太』と呼んでいたのです。

つまり、捕虜を使って人体実験が行われていたのです。

そこでは、蚤に寄生させた細菌を感染させるなど、かなり非人道的な実験が行われていました。

また、飛行機による細菌の散布なども、いくつかの都市で実験されたようです。

こうして得たデータを元にして、最大の敵国であるアメリカにこのような細菌兵器を使用することを考えていました。

その方法としてまず、培養したペスト菌やコレラ菌等を鼠に感染させ、この鼠の血を吸わせた蚤をばらまくことを思いつきます。

さらには、蚤の中からより強い個体を選びだす方法も考えだします。ここまで来ると、本当に狂気としか言いようがありません。

しかし、細菌に感染させた蚤を、遠く離れたアメリカにどうやってばら撒こうというのでしょう?

ここで、天才的ともいえる独創的アイデア(悪い意味で)を思いつきます。

そして、この方法こそが、本作のタイトルでもある『蚤と爆弾』の由来です。

もし、この細菌兵器が実用化され、アメリカやその他の国にまで使用していたら、当時の国際情勢は大きく変化したかもしれません。

本作の最後、天才医学者であるこの部隊長の葬儀にかつての同僚が弔問するシーンがあります。

彼らは互いに目を合わさずに淡々と焼香を済ませ、すぐに散り散りに街へ消えていくというのがなんとも不気味で印象的でした。

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吉村昭ってどんな人だったの?

吉村昭先生は東京都の出身です。

早くに両親を亡くした彼は、兄の援助により学習院大学に進学しましたが、病気により中退しています。

その後、親族が経営する会社に勤務しながら精力的に執筆活動を行い太宰治賞を受賞。これをきっかけに、会社を退職して本格的な作家活動に入りました。

その後も徹底的な調査に基づくノンフィクション小説を数多く発表し、様々な賞を受賞。

晩年は舌癌や、すい臓の病気を患って治療を続けていましたが、自らの意思により治療を中断して最期を迎えたそうです。

その人生はとても壮絶で、作品の登場人物を重なるように思えてなりません。

きっと、こういう強い人だからこそ、壮大で重厚なテーマを扱った数多くの作品を生み出してきたんでしょうね。

では、今回はこのあたりで失礼します。

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